光城精工 KOJOTECHNOLOGY

電解コンデンサの寿命

(アルミ)電解コンデンサは、各種オーディオ機材において、電源部(交流を直流に変換する部位)には欠かせないパーツです。知っての通り、巨大なパワーアンプやCDプレーヤ等の小容量のデジタル機材においても、その役目は重要であり、大容量化や低インピーダンス※1化が計られています。聴感上は別として回路技術的に言った場合、コンデンサ部のインピーダンスを減らすためには、大きい容量のものをドーンと配置するより、容量の小さいものを多並列にした方がインピーダンスを低減できます。

さて本題ですが、この電解コンデンサの寿命を決めているのは、実は使用電圧などではなく温度なのです。(もちろん使用電圧やその他の条件が規定耐量を満たしている上での話ですが、昔は電圧に対する耐量もあまりマージンがなかったと聞きます) また、聞きなれない言葉とは思いますが、電解コンデンサに流れる「リプル電流※2」もまた、寿命に大きく関っています。しかしながら、このリプル電流なるものも、結果的にコンデンサ内部の温度を上昇させるものであり、やはり温度が寿命を左右すると言っていいでしょう。

細部に渡って説明しようとすると、より専門的な用語が出てくるため他の文献等に譲りますが、温度と寿命の間には「アレニウスの法則」が成り立つようです。この法則は、平たく言うと温度が10℃下がると寿命が2倍伸びるとされ、「10℃2倍則」とも言われます。単純に電解コンデンサの寿命を伸ばしたい場合は、周囲温度が低い環境で使用するのが良いということになります。

仮に「105℃2000時間」で規定された電解コンデンサは、内部発熱がなかった場合(ありえませんが・・・)、105℃の使用環境下において2000時間で寿命が来ます。これが95℃になると4000時間、85℃だったら8000時間、65℃では3万2000時間となるわけです。(あとは皆さんで計算してみてください) 仮に65℃の環境下で毎日24時間フル稼働させたとすると、3万2000時間÷24時間÷365日※3で3年半強の寿命ということになりますね!

KOJO TECHNOLOGYの電源は、この点設計段階で10年以上持つように設計しています。これは各機種とも定格入出力条件(フル負荷)で昼夜連続稼動した場合のもので、良好な使用環境や軽負荷の場合、あるいは使用しないとき休ませたりすることで、電解コンデンサの寿命は飛躍的に伸びます。

また、大概の電子機器に言えることですが、電解コンデンサの故障率は、西洋の浴槽の形状に似ていることから「バスタブ曲線」状と言われており、使い始めの時期は故障率が高いが、次第に低下し安定期(偶発故障時期)を迎えます。(これは恐らく、エージングが進み音質的にも安定した状態にあることを示していると思います)そして、実際の耐用年数を迎える頃には、磨耗故障時期となり再び故障率が上昇していきます。

上述は、コンデンサの寿命に関し、長い期間(年単位)で見ました。 他方、普段オーディオ機材を使っているとき(短い期間)の電解コンデンサの振る舞いは、コンデンサに電圧が印加された直後は漏れ電流※4が多く、数分経つと減っていき安定するようになります。コンデンサメーカでは、この漏れ電流値をデータシート等で表記していますが、だいたい5分経過後の値だそうです。 他のパーツも含めてですが、オーディオ機器の起動後、20~30分暖機運転した方が良いというのは、この辺からも納得できますね!

  1. 極一般に知られる抵抗というものがありますが、これは電気回路において電気を流さない、すなわち「抵抗する」もの、電流の流れにブレーキをかけるもので、単位にΩ(オーム)を使います。インピーダンスも単位はΩですが交流に対する抵抗を意味します。電子部品としてコイルやトランスはインダクタンス部品とされ、直流においては殆ど抵抗値が存在しませんが、高周波になるに従いインピーダンスは高くなります。一方コンデンサは、直流においては無限大の抵抗値を持ち、高周波になるに従いインピーダンスは低くなります。(理想値)
  2. 交流から直流に変換される時点で、ダイオードという半導体を使用して半波整流ないし全波整流しますが、この時点では直流にはなっておらず脈流となっています。脈流はコンデンサに充放電を繰り返し行うことになり、この電流のことをリプル電流といいます。その行為自体はコンデンサにとって負荷であり、コンデンサ内部のインピーダンスにより熱に変換されます。
  3. 寿命というものをわかりやすくするため単純計算しております。専門家の方は参考にされないで下さい。
  4. 実際にコンデンサから漏れ流れ出る電流ではなく、自己で内部消費している電流です。漏れ電流は温度が高くなると大きくなり、温度が下がると小さくなります。